遅ればせながら、ようやく軌道に乗りはじめたヨーロッパ圏の
クラシックですが、何かと不自由なこともまだ多いようです。
昨日はアイルランドのカラで愛2000ギニーが開催されました。
しかし、出馬表をご覧になって「異変」をお感じになった方も
少なくなかったと思います。先週のニューマーケット競馬場で
大活躍したトップジョッキーの名がそこになかったからです。

ヨーロッパ、とくにイギリスとアイルランドは人馬の日常的な
交流が、日本で言えば、栗東の所属馬が関東へ遠征するくらい
気軽に行われています。ジョッキー移動も然りです。ところが
ヨーロッパでは現在、国境を越える移動には2週間の隔離検疫が
義務づけられ、例えばアイルランドでは絶対的な優位性を誇り
昨日の愛2000ギニーに出走11頭中6頭を大挙ゲートインさせた
バリードイル(エイダン・オブライエン厩舎の調教拠点)勢の
鞍上は主戦ライアン・ムーアはじめ、先週開幕の英国競馬から
久々に助っ人陣に馳せ参じた名手ランフランコ・デットーリや
ジェームズ・ドイルなど、錚々たる顔ぶれが見当たりません。
来週スタートのロイヤルアスコット開催に温存した結果です。
これもウィズ・コロナ戦略の一環なのでしょうか?

それにしても、馬主や調教師などレースに関わるホースマンは
大変ですね。不透明な状況の中でも、先の先まで読みに読んで
正解のない難攻不落のジグソーパズルを解くように、馬と人の
スケジュールをキッチと当てはめていくことが求められます。
たぶん、例えば天才エイダンの頭の中には今シーズンすべての
馬ごと、人ごとのロードマップが描かれているんでしょうね。
それも一通りではなく、何十通り以上ものバリエーションが。
しかし、このあたりも馬券を難しくする一因になっています。
選ぶロードマップが変化すれば、すべてに影響するからです。

さて愛2000ギニー、レースは非常に見応えがありました。
バリードイルでは、日頃から馬も人も良く訓練され、レースに
臨めば、見事に統制の取れたワンチームで勝利を目指します。
ここまでG1フェニックスSを含めて4戦4勝と負け知らずの本命
名門ジュドモントファームのオーナーブリーダー馬シスキンが
ライアンや強力助っ人不在とは言え、バリードイルの鍛えられ
磨き抜かれた芸術レベルのチームプレーの壁を打ち破れるかに
レースの見どころは絞られていました。

案の定、スタート一息だったシスキンの前にバリードイル勢が
機先を制して入り込み、4枚もの分厚い壁となって立ち塞がり、
外からも蓋をされ、最内にロックされる絶体絶命の大ピンチ!
バリードイル残る1頭、ロペワイフェルナンデスは最期の刺客が
そのミッション、最後方で脚を溜め勝機をうかがっています。
そして遂に、ロペが強烈な捲りを仕掛け、それに連れるように
馬群全体が急加速に移った瞬間、水も漏らさぬはずの包囲網に
コンマ何秒間かだけ、わずかな綻びを見つけ出したシスキンは
その間隙を縫って奇跡的にも外へ持ち出すことに成功します。
後は先に抜け出したロペを目がけて、矢のように伸びるだけ!
鉄壁の包囲網を打ち破って不敗の5連勝を飾っています。

父がスプリンターのファーストディフェンスで、4連勝すべてが
1200m戦と距離不安も囁かれていたのですが、ポテンシャルの
高さはさすがです。ダービーはどうかと思うのですが、連闘で
ロイヤルアスコットのマイルG1のセントジェームズパレスSに
出てくるようなら好勝負できるでしょうね。
なにしろ今季はどの馬も使い出しが遅く、まだ余力十分です。
若駒であれば、さらなる伸び代を見せる馬も現れるでしょう。
「ウィズ・コロナ」時代の馬券戦術というのもありそうです。