日曜のG3アイビスサマーダッシュは、上がり馬ライオンボスが
三段跳びを決めて、一気に直千王の座に君臨しました。春まで
1200m戦でドンジリ負けを繰り返していた馬です。コーナーの
あるなし、1ハロンの距離の差で、こうも違うものでしょうか?
しかし直千に限ればライオンボスが出走可能なのはアイビスと
OP韋駄天S、リステッド・ルミエールオータムダッシュの年間
3つだけ。後者2レースは重い斤量を背負わされるでしょうから
実質は年間1レースだけ。海外遠征の声が掛かるのも自然かも。

ヨーロッパはスプリント戦が充実しており、その大きな特徴は
1000m級の5ハロン路線と1200m級の6ハロン路線が区別され
異なったカテゴリーとして、はっきり独立していることです。
5ハロンだけも、ロイヤルアスコットのキングズスタンドSから
グッドウッドのナンソープS、凱旋門賞当日のパリロンシャンは
アベイドロンシャン賞、アイルランドのフライングファイブSと
4つものG1が組まれており、前哨戦を加えれば一流馬が存分に
能力を発揮できるだけの番組が質量ともに編成されています。
6ハロン戦はもっとバラエティに富みG1だけで5つの充実ぶり、
ドバイとアメリカを視野に入れれば選択肢はさらに増えます。
無論、双方のカテゴリーを行き来する馬も珍しくありません。
日本とは比べものにならないほどのスプリンター天国ですね。

ライオンボスの勇姿を見ていると、稀代の直線ランナーだった
超特急アグネスワールドのことが、思い出されてなりません。
1999年ですから、もう20年前、当時は新潟競馬場が改修前で
直千レースもなかった頃、ワールドが直線競馬を求めて渡欧し
モンジューが勝ちエルコンドルパサーが2着に惜敗した歴史的な
凱旋門賞当日のアベイドロンシャン賞を快勝し、ロンシャンの
表彰台の真ん中に威風堂々!高々と日の丸を掲げたものです。

翌年も海を渡り、ロイヤルアスコットのキングズスタンドSで
2着に健闘すると、返す刀でニューマーケットのジュライCでは
本場の強豪馬を撫で斬り!2個目の金メダルを首にかけました。
ワールドは小倉1200mで1分06秒5と今も残る日本レコードの
保持者ですがコーナーが苦手で日本のG1では2度の2着と3着と
後一歩で涙を飲んだ馬です。海外通で知られる森秀行調教師の
管理馬でしたが、森師、生涯最高の大仕事だったと思います。

それにしても、ライオンボスは不思議な馬です。急激な底力の
強化には仰天させられますが、その理由も、謎めいています。
アグネスワールドのようにコーナーワークに難があったのか?
1000mと1200mでは、最後の一踏ん張りに差が出てくるのか?
血統的にもダート向きのイメージが強い父系で、芝の電撃戦で
隠された能力を突然、全開するとも想像しにくいタイプです。
その秘密らしき要因を探れば6代母にセックスアピールの名が
出てくることです。バトルプランの父エンパイアメーカーにも
母父エルグランセニョールを介し、その母セックスアピールの
血が流れ、ライオンボスに5X6の牝馬クロスを伝えています。

セックスアピールは最近もアーモンドアイの3代母として名を
上げ、ダートの快速馬カジノドライヴもこの一族の出身です。
ノーザンダンサーの血を授かった全弟エルグランセニョールは
英2000ギニーなど8戦7勝の傑出したマイラーでしたが、兄の
トライマイベストはデューハーストSなどデビューから4連勝の
快速馬として鳴らし、その3代目に現れたアクラメーションと
4代目ダークエンジェルの父子は、現在、欧州スプリント界に
もっとも大きな影響力を及ぼし、さらに勢力を拡大しつつある
旬の父系。仕上がり早く2歳から活躍するリーディング上位の
常連で、大物はチャンピオン級のスプリンターに成長します。
セックスアピールの血が大事にされている欧州、日本から来た
彼女の末裔が奮闘すれば、ファンは大喜びしてくれそうです。