「神様は乗り越えられない試練は与えない」
突然にも、大変な病魔に襲われた池江璃花子さんの言葉です。
池江さんにサラブレッドの姿を重ねるのは失礼とも思いますが
明日の小倉に出走するレッドヴァールの生き様が浮かびます。

彼女は一昨年の小倉 1800mの新馬戦でデビューに臨み道中から
その勝利を確信させるほどの素晴らしい走り!しかし余りにも
行きっぷりが良すぎて早めに先頭に立ち、後続の目標にされて
メイショウテッコンの末脚の餌食となりクビだけ惜敗します。
テッコンは後にラジオNIKKEI賞で重賞初制覇、神戸新聞杯では
ダービーで世代頂点を極めたワグネリアン、史上最強の1勝馬
エタリオウと互角に叩き合い堂々3着に食い下がった実力馬!
いま思えばヴァールの半端ない素質を暗示したレースでした。

1歳になったばかりの彼女を見たアドバイザーの鬼塚義臣さんが
「馬体に伸びがあり、しなやかさも出て、素晴らしいデキ!」
と大絶賛していました。「鬼の眼」は伊達じゃありませんね。
しかし好事魔多し、ヴァールはレース後に骨折が判明しJRAの
リハビリセンターいわき温泉へ休養に出されます。お馴染みの
しがらきや天栄に束の間放牧に出されるのとワケが違います。
いわき温泉と聞くだけでカネヒキリやカジノドライヴ、自らに
秘められたポテンシャルが自らのフィジカルを超越してしまう
アスリートとして優れているがゆえの悲劇が想起されました。

幸いにヴァールは半年ほどで帰厩、再起へ向けて調教を慎重に
重ねますが今度は骨髄に炎症を発症し、いわき温泉へ逆戻り。
そうこうする内にも時計の針は残酷に進み未勝利戦終了の日が
迫ってきます。母系に名種牡馬バーンスタインや北米で人気の
ワイズマンフェリーを輩出する血統背景もあり、牝馬ですから
繁殖入りの選択肢もありましたが、競走馬としての底知れない
ポテンシャルに惹かれ心機一転を図る転厩で復活を探る道へ!
鹿戸雄一師は、ヴァールとケースは違えど不振にあえいでいた
エフティマイヤ、スクリーンヒーローなどの転厩を引き受けて
前者は桜花賞・オークスのダブル2着、後者はジャパンC快勝と
斯界きっての「再生仕事人」として凄腕を振るってきました。

そして15ヶ月ぶりにターフに帰って来たヴァールは、超久々の
不利も格上挑戦の重圧もはね除けて見事に初勝利を飾ります。
ヴァールの精神力に感嘆!心からの尊敬の念しかありません。
「神様は乗り越えられない試練は与えない」池江さんの言葉は
本当なのだ、ヴァールが話せたらきっとそう言ったでしょう。
「山あり谷あり」前走はキャリア不足を露呈して負けましたが
ヴァールともども、池江璃花子さんのご快復をお祈りします。