日本で言えばブラックタイドとディープインパクト、海外では
サドラーズウェルズとフェアリーキングが全兄弟種牡馬として
著名です。しかし全兄弟でも伝える個性がまったく異なるのも
しばしば。兄サドラーズは欧州伝来の重厚で奥行き深い底力で
大レースを勝ちまくり、弟フェアリーはスピードで名声を高め
産駒シンコウキングやエンコスタデラゴが短距離王国で有名な
ニュージーランドやオーストラリアで大種牡馬に成長します。

日曜京都の新馬戦は1600mの距離に、G1馬ラブリーデイの全弟
ボッケリーニを筆頭に桜花賞馬キョウエイマーチを祖母と仰ぐ
マルシュロレーヌ、ディープインパクトの期待馬サイベリアン
レッドアウローラなどが顔を揃え上位人気を集めていましたが
10番人気と低評価だったトーセンラー産駒アイラブテーラーが
12秒4ー12秒0ー11秒6と加速ラップの直線の攻防を制します。
考えてみれば、父のトーセンラーは同じ京都の同じマイル戦で
マイルチャンピオンシップを制したばかりか4勝の全勝ち鞍を
京都コースで固め打ちした絶妙無類の淀専用ランナーでした。

京都名物三角手前の坂の下りでしなやかにストライドを伸ばし
グンと加速すると平坦の直線を余勢で駆け抜ける戦法でした。
いわば良い脚を長く使えるタイプ。この個性が京都コースなら
3200mの天皇賞春2着、3000mの菊花賞3着と長距離レースで
活躍できた秘密なのでしょうか?1歳下の全弟スピルバーグは
現2歳勢が初年度産駒で、デビューが心待ちにされていますが
ご承知のように全兄ラーとは180度違うタイプの競走馬です。

全6勝のすべてを東京コースで上げており、直線の難所である
坂上でギアチェンジし瞬発力全開!トップスピードに達するや
一気呵成にゴールに飛び込む疾風が如き末脚は爽快そのもの!
結局、天皇賞秋が最初で最後のG1かつ重賞戴冠だったのですが
今でも悔やまれるのは共同通信杯。10秒台の鬼脚を二度続けて
繰り出しトップスピードに乗った直線坂上で手痛い不利を受け
立て直して追い込みながらゴールドシップの3着に敗れました。
2着ディープブリランテとはわずかハナの差!無念の惜敗です。
後に前者は、皐月賞と菊花賞の二冠、暮れに有馬記念を勝利し
後者はダービー馬の栄光に輝きました。わずかな着差の狭間に
その年の三冠すべてとグランプリまでもが埋まっていました。

脚質が脚質だから常に安定したレースができるとは限らないが
その規格外の瞬発力は、配合に関わらず強力無比な武器として
産駒に伝えられるはずです。父同様に2000m級で真価発揮する
仔が多いのでしょうが、スプリントやマイルなどカテゴリーを
超えて、瞬発力の確かさが現代競馬の鍵とも言えそうですから
ディープらしからぬ雄大な馬格と併せて、ニューディープとも
呼べそうな新しいスタイルを切り拓いてくれないでしょうか?