日曜の中山で、アーモンドアイの国枝栄厩舎からデビューする
レッドアステルの出馬表を眺めていたら興味深い一頭を発見!
チェリーアトラスという勢司和浩厩舎の芦毛馬がそれでした。
父チェリークラウンと聞いてピンと来る方は少数派でしょうが
マイナーな存在であっても実は人知れず隠れた名種牡馬です。

現役時代は中央で1勝、地方3勝と地味で平凡な競走馬でしたが
櫻井悦朗オーナーの「自分の馬の仔で重賞を勝ちたい」という
壮大な夢に後押しされて、日高SSで種牡馬入りを果たします。
ただし種付け料は無料。しかしタダでも、大事な牝馬に無名で
実績のない種牡馬を付けようという生産者は、まずいません。
オーナー自身の所有牝馬か、恐らく産駒買取条件で拝み倒して
集めた牝馬がお相手のプライベート種牡馬として出発します。

サラブレッドの生命力は神秘なものです。チェリークラウンは
数少ない種付けながら、受精率は抜群で順調に仔馬を送り出し
彼らが走りはじめると、想像を裏切るドラマが幕を開けます。
初年度産駒はデビュー7頭中6頭が勝ち上がり、85%を超える
驚異的な勝馬率を記録します。2世代目も同様の成績を残して
3世代目は5頭とデビューは少なかったですが、勝馬率100%と
パーフェクト!隠れた名種牡馬と言って良い足跡を刻みます。

父チーフベアハートはダンチヒの血脈を継ぐカナダの一流馬で
日本で天皇賞春のマイネルキッツ、朝日杯フューチュリティSの
マイネルレコルトを出しましたが彼らは種牡馬になれず、結局
後継は皮肉にもチェリークラウン1頭が残っただけの現状です。
母系を遡れば、4代母パロクサイドを源流としてダイナカール・
エアグルーヴ母娘が出ており一本も二本も筋が通っています。

チェリークラウンは来年も種付無料で9年目に入る種牡馬生活を
続けます。ある意味この継続も凄いことです。日高SSの閉鎖で
行き場を失い櫻井オーナーの奔走で現在のレックススタッドへ
難を逃れました。オーナーの衰えぬ情熱と注いだ愛情の深さが
伝わるエピソードです。血は愛情で繋がり新たに誕生した命が
その情熱と愛情ゆえ走る、そんなことを考えさせられました。
大手牧場などのビジネスライクな生産活動も必要不可欠ですが
こうした個人馬主の挑戦があってこそ競馬の奥が深まります。

櫻井オーナーの「壮大な夢」の物語には、まだ先がありますが
日曜、チェリーアトラスがその一歩を刻むことができるのか?
フルゲート16頭に対してエントリー29頭で除外13頭の超難関を
競馬の神に愛されて突破した幸運なサラブレッドたちの戦いは
プロフィールや個性も多様でアトラスのように種付け無料から
アステルはそれが4000万円に高騰した父の血を継ぎました。
その面では両極端のライバル同士ですね。彼らのフレッシュで
真摯な戦いに今から心が躍るようで楽しみが膨らむ思いです。